赤い惑星、ムチノセカイ

映画『赤い惑星』(村瀬大智監督)と『ムチノセカイ』(唯野浩平監督)を観た。両監督は京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)の卒業生だという。

好きな役者の一人、井浦新氏が『赤い惑星』についてコメントをしていたこともあり、上映している池袋シネマ・ロサも比較的近所だからという理由で、衝動的な興味本位で水曜日の仕事終わり、20時半少し前に劇場に向かった。『赤い惑星』→『ムチノセカイ』の順で上映された。

そして、二日後の金曜日、私はまたもやシネマ・ロサに赴くことになる。

この日は上映最終日。舞台挨拶もあることは知っていて、それも再訪する理由の一つではあった。しかしそれよりも、脳味噌がじたばたして仕方がなく、これをどうにかしたい一心だった。水曜日の観劇後は、久しぶりに豊潤な芸術に触れたこともあってか、脳内がぐらぐらした。帰り道では少しの放心と、この感覚を言葉にしたいけどどうにもできず(感想はあるはずなのに出てこない状態)、翌木曜日は仕事をしながらもずっと呆けている感じだった。登場人物たちの目や表情が焼きついていたのだ。

二回目、そして上映後の舞台挨拶もあったことで、ぐつぐつとした何かが喉をしっかりと通っていった気分になれた。ストーリーの全貌や、画面の中の登場人物たちのちょっとした仕草に込められた意味は、もちろん推測しきれないしわからない部分も残っている。わからないところのほうが多いと言っておいたほうが正直かもしれない。

金曜の夜に、無事に文章化することができた。
感想ツイートを以下に残しておく。

『#赤い惑星』、色味のない世界に現れる鮮やかな赤黒い旗。水辺のシーンで”赤いシャツの男”のそれが映えたときもドキッとする。だけど、ラストショットはなぜか、居心地は悪くない。音楽は地鳴りのようで包まれて居たくなった。几帳面なヒトシがタオルまでも律儀に引き出しの中に仕舞っているのが好き
『#ムチノセカイ』、緩急がありながら、常に緊迫感があって鬱屈とした空気が漂う。最後には、観客は目撃者になる。全編通して、特にグンの表情は見逃したくない。コンビニ店長のおぼつかない感じも気味が悪くて好き。とにかく自分の自転車にはしっかりと鍵をかけたほうがいい!
個人的には、グンの言葉によって自分が前向きに奮い立たせられるようなことはない。が、彼のあのヒリヒリとした目に唆されたいとは思う。痺れ願望が確かにある。まあ実際に眼前にしたら打ちのめされるんだろう。#ムチノセカイ

ツイートでも特筆している「グン」は、『赤い惑星』の村瀬監督が演じている。あの目はこれからもずっと忘れられない。

舞台挨拶では、両監督も登壇し、作品づくりの経緯を聞くことができた。『ムチノセカイ』のシンゴ・アキラ・グンは、それぞれの役者への当て書きだという。グン、つまり村瀬監督の人間性の切り取り方(ダーク寄り)について、「話しかけられづらくなっている」(村瀬監督)と吐露したあとに、普段は温和だという唯野監督について、「(作品を観て、)唯野はこんなことを思っているのだと思ったら怖くなった」と皆から総イジりを受けていたのも印象的だった。

井浦新氏はコメントで、村瀬監督について「新しい波」「新しい風」と表現していた。私は今回の二作をまるっとあわせて、その表現が確かなことを受け取った。
次回作を待ちわびて。