ロックンロールの初期衝動

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このタイトルだけを見ると、スピッツのニューアルバム、「醒めない」を連想する人はいるだろう。しかし今回はスピッツのことではなく、群馬初の3ピースロックバンド「秀吉」のツアー初日について、拙いながら書いていきたい。

2016年8月20日。落ち着かない天気のなか、新代田FEVERにて「秀吉のロックンロールツアー!初日」が敢行された。その名の通り、8月3日リリースのニューアルバム「ロックンロール」をひっさげてのツアーとなる。ちなみに3年前の8月には、ここFEVERで「むだいの恋人」と称した、indigo la Endとの2マンライブが行われている。

今日のライブの開演を告げるのは、「まっくらやみの中で」。

ステージ上から発せられる音が、声が、いつもよりも力強く聞こえたのは、私がスピーカーの前に陣取っているからなのか。そう一瞬思ったが、きっとそれだけではなかったはずだ。加えてツアー初日というのもあるだろうが、やはりこの「ロックンロール」というニューアルバムに掛けるメンバーの思いの強さが露呈されたのだろう。今回のアルバムが、自主レーベルになってから新しく作った曲ばかりのアルバムであることや、クラウドファンディングでの、ファンと一体になったアルバム制作に挑戦したことは、大きいと予想できる。また、vo&gt柿澤秀吉氏の、至る所でのインタビューにもあったような気がしているが、自分たちの音やライブを素直に肯定するようにしたことも(客に『今日のライブよかったです!』と言われたら『俺もそう思う!』と返すとか)、この力強さに少なからず影響しているのではないかと感じた。

そして、ニューアルバムからの「叫び」と「潮騒」はそれぞれ今までの秀吉の曲にはなかったような、速さ、ドコドコ加減であり、おかげでメンバーはそこに疲労を見せつつも(笑)、どこか、何かを爆発させるような演奏であった。これまた何時ぞやのインタビューから、「みんなでLUNA SEAの曲をスタジオで合わせたりするようになって……」といったような文面を思い出し、納得がいった。そこにあるのは"初期衝動"だと。

また特記したいのは、弾き語りでは「癒される」とコメントされる柿澤氏の声も、「秀吉」というバンドのなかで鳴らせば別物で、特別にエモーショナルで、ぐるりとえぐられるものとなる、ということだ。しかも今回、「ヌル」はダブやレゲエ調だったり、「明けない夜」はラップ風だったり、そして「メリーゴーランド」では語りを入れていて、そのエモさが余計に際立っているのだ。

楽しい時間の流れは早いものであり、「ロックンロール」の曲はもちろん、「道草の唄」など懐かしい曲も演奏しつつ本編終了。その後アンコールがあり、ライブの最後は「夜風」で締めくくった。

帰り道、何故私はこんなにも秀吉のライブに足を運んでいるのだろう、と考えた。普段聴いている秀吉の音楽を生で観たいとか、同じ空間で、同じファンと楽しさや切なさを共有したいという気持ちは当然あるし……っていうか単に「好きだから」でいいじゃん、とも思うけれど。しかし「明けない夜」の歌詞に「感動や熱狂といったそれは 1、2回目で飽きてる」とあるように、何回も行くものなのかな?と。周りから見ればそう思われるのかなあと思ってみたり。ただ、今回の自問自答で私が見出した答えは、そのときの秀吉を目の当たりにしたい、今の秀吉を目撃したいから、である。「三日月と砂漠の花」を初めてライブで聴いて、なんだか新鮮だなと思ったこと、「明けない夜」を聴いたときも、ちょっといつもと違うなと思ったこと。そういえば今日は「ヌル」のイントロが聞こえてきたときに、ダークな、ブラックな秀吉を目撃できるのだとワクワクしたものだ。秀吉のライブには、毎回、初めての感動や熱狂があるのだと言えるかもしれない。

「結成12年。人生で言えば小学6年生ほど」と本人たちは言っていた。それならば、同じく人生で言ってみれば、まさに成長期。

まだまだ、落ち着くことなく、秀吉の成長や挑戦、遊びを見せつけていってほしいと思う。

12月、地元高崎でのワンマンも、首を長くして楽しみに待っていたいものである。

・秀吉「明日はない」MV

http://youtu.be/i3t66F_7rPA

・秀吉「ロックンロール」 全曲試聴

http://youtu.be/yxyG4Wvw3kg